百日咳(ひゃくにちぜき)は、長く続く激しい咳が特徴の感染症です。
初めは軽い風邪のような症状で始まりますが、1~2週間後には「コンコンコン」と連続した咳が強まり、咳き込んだあとに**「ヒューッ」という音を立てて息を吸い込む**ような特徴的な咳発作(けいがいほっさ)が現れます。
この咳は夜間に特に強くなりやすく、咳の勢いで嘔吐することもあります。
熱はあまり出ず、咳がないときは元気に見えるのも特徴です。
典型的な「ヒューッ」という咳が見られないことがあります
呼吸が一時止まる(無呼吸発作)や、顔色が青紫になるチアノーゼが見られることも
症状が急激に悪化し、命に関わることもあるため注意が必要です
この時期の赤ちゃんは、咳をする力も弱く、症状がわかりにくいのが特徴です。
百日咳による死亡例の多くが、この月齢の赤ちゃんに集中しています。
発熱は少なく、咳が長く続くのが特徴です
咳発作のあとに嘔吐したり、「ヒューッ」と息を吸い込む音が出ることもあります
夜に咳がひどくなって眠れない場合も多く、体力を消耗しやすい時期です
この年代では、特徴的な咳が現れやすく、百日咳と診断されるきっかけになります。
咳が1~2か月以上続くだけで、発作的な症状が出ないこともあります
自覚症状が少ないため、「ただの風邪」と思って放置されがちです
しかしこの年代でも菌を排出しているため、乳児などにうつすリスクがあります。
家族に赤ちゃんがいる場合には、咳が続く人は特に注意しましょう。
百日咳は大きく分けて3つの時期に分かれます。
時期 | 特徴 |
---|---|
カタル期(1~2週間) | 風邪のような症状(鼻水・くしゃみ・軽い咳) |
痙咳期(2~6週間) | 発作的な咳が頻発。「ヒューッ」という音や嘔吐も見られます |
回復期(2~3週間) | 徐々に咳が治まり、発作の回数も減っていきます |
咳が完全に治るまで2~3か月以上かかることもあります。
この長い経過が「百日咳(100日咳)」という名前の由来にもなっています。ただし、最近はワクチンの普及で典型的な症状を呈さないことが多いように思われます。
百日咳の診断は、咳の経過や症状の特徴から総合的に判断されます。
流行地域では、「1週間以上咳が続く」「咳の後に嘔吐する」「ヒューという呼吸音がある」などがあれば、百日咳が疑われます。
さらに、確定診断には以下の検査が行われることもあります:
PCR検査、LAMP法:鼻の奥からぬぐい液を取り、百日咳菌の遺伝子を調べる方法(精度が高い)
抗原検査:鼻の奥からぬぐい液を取り、百日咳菌の抗原を調べます
(参考検査)
血液検査:白血球(リンパ球)が増えているかを確認
胸部レントゲン:肺炎など合併症の有無を確認
咳が長引くときは、「様子見」せず早めに小児科へご相談ください
赤ちゃんの周りに「咳をしている大人」がいるときは注意が必要です
百日咳は、予防接種(DPT-IPV)で重症化を防ぐことができます
大人や思春期の子どもも、症状が軽くても菌をうつす可能性があります
特に赤ちゃんがいるご家庭では、家族全員での感染対策が大切です。