春~夏の子どもの熱中症と対策について

全国的に気温が上昇してきていますが、鳥取県内では、鳥取市や米子市など各地域で25度を超える日があり、夏のような暑さを感じることも増えています。しかしこの時期は、まだ体が暑さに慣れていないため、真夏と同じくらい熱中症のリスクがあります。
そのため、体を少しずつ暑さに慣らしていく「暑熱順化(しょねつじゅんか)」を意識することが大切とされます。今のうちから、無理のない範囲で体を暑さに慣らす工夫をしていきましょう。

暑熱順化とは?

暑熱順化とは、体を徐々に暑さに慣れさせることで、暑い環境に適応できるようになる生理的な変化のことです。暑熱順化が進むと、以下のような変化が起こります:

  • 汗をかきやすくなる(発汗量の増加)
  • 汗に含まれる塩分量が減少する(塩分保持能力の向上)
  • 皮膚の血流量が増加し、体の熱を効率よく放散できるようになる
  • 心拍数の上昇が抑えられる

これらの変化により、暑い環境下でも体温上昇を抑制でき、熱中症のリスクを下げることができます。

子どもの暑熱順化の特徴

子どもは大人よりも暑熱順化に時間がかかると言われています。大人は1〜2週間程度で暑熱順化が進みますが、子どもや高齢者は約1ヶ月かかることもあります(個人差はあります)。

また、せっかく暑熱順化ができても、数日間涼しい環境で過ごすと元に戻ってしまうことにも注意が必要です。梅雨の時期は比較的涼しい日が続くため、梅雨明け後の急激な暑さに体が対応できず、熱中症のリスクが高まります。

暑熱順化の方法

4月から5月にかけて、少しずつ暑い日が増えてくるこの時期は、暑熱順化を始めるのに適したタイミングです。無理のない範囲で、汗をかく機会を少しずつ増やしていきましょう。

1. 適度な外遊びを奨励する

  • 涼しい朝や夕方の時間帯に外で遊ぶ機会を作りましょう
  • 週に3〜5回、30分程度の軽い運動から始めるのが良いとされます。
  • 公園や庭で鬼ごっこやボール遊びなど、楽しみながら体を動かせる活動がよいでしょう
  • 必ず水分補給をしながら行いましょう

2. 入浴習慣を活用する

  • シャワーだけでなく、湯船にしっかりとつかる習慣をつけましょう
  • 入浴の温度は、38〜40℃程度のぬるめが良いでしょう。
  • 入浴時間は10〜15分程度を目安に
  • 入浴前後には必ず水分補給をしましょう
  • 毎日または1日おきの頻度で継続することが効果的です

3. 室内での活動でも汗をかく機会を作る

  • 室内でのダンスや体操など、体を動かす遊びを取り入れる
  • 家事の手伝い(掃除や洗濯物干しなど)も良い機会になります
  • エアコンの設定温度を少し高めに設定し、扇風機と併用するなど、適度に汗をかける環境づくりも効果的です

暑熱順化が特に必要なタイミング

以下のようなタイミングでは、体が暑さに慣れていない可能性が高いため、特に熱中症に注意が必要です。これらの時期の2週間前から暑熱順化を始めるとよいでしょう。

1. 5月の暑い日

5月でも最高気温が25℃以上の夏日や、30℃以上の真夏日となることがあります。体がまだ暑さに慣れていないため、気温が急に上がる日は特に注意が必要です。

2. 梅雨明け直後

梅雨明け後は晴天が続き、気温が急上昇することが多くあります。梅雨の間に暑熱順化ができていないと、熱中症のリスクが高まります。

3. お盆明け

夏休みなどのお休みの期間の過ごし方によっては暑熱順化が戻ってしまうこともあります。特に旅行や帰省などで涼しい場所に滞在していた場合は注意が必要です。

暑熱順化を進める際の注意点

暑熱順化を進める際も、熱中症にならないよう以下の点に注意しましょう:

  • 無理のない範囲で少しずつ進める
  • 必ず水分・塩分補給をしながら行う
  • 体調の悪い日は無理をしない
  • 子どもの様子を観察し、顔色や汗のかき方に注意を払う
  • 気温が高い日は特に慎重に行う

暑くなる前に

熱中症は予防が重要です。夏本番を迎える前の今から暑熱順化を始め、子どもの体を徐々に暑さに慣れさせていきましょう。暑熱順化と併せて、こまめな水分補給や服装の工夫など、総合的な熱中症予防対策を行うことが大切です。

詳しい熱中症の症状や予防方法については、参考記事を参照して下さい。

 

【参考記事】

【子どもの熱中症】症状・予防・対処法

熱中症に関するよくある質問(Q and A)

ヌカカ(干拓虫)の特徴と対策|

🐛 米子市で注意したい幼虫・成虫の特徴

鳥取県米子市では、通称「干拓虫」と呼ばれるヌカカが毎年5〜7月にかけて活発に活動します。ハエ目ヌカカ科に属するこの昆虫は、体長1mm程度と非常に小さく、網戸の目をすり抜けて室内にも入り込むことがあります

刺されると強い痒みが数日続くこともあり、小さなお子さんや敏感な肌の方にとっては、トラブルになりがちです。


🌱 ヌカカが多い場所・タイミングとは?

  • 発生場所:干拓地や荒地、枯葉が溜まった農地周辺 

  • 活発な時期:毎年5月から夏にかけて、特に6〜7月がピーク 

  • 要注意時間帯:朝夕の風の弱い時間帯


🛡 ヌカカによる虫刺されの予防

  1. 肌の露出を避ける
     長袖・長ズボン・帽子・首元のタオルで、隙間をガードしましょう。

  2. 虫よけスプレーを活用
     特にイカリジン配合製品がよいようです。小さな子どもから大人まで、顔や衣類にも安心して使えます(米子市HP

  3. 屋内対策
     網戸スプレーや電気蚊取り器で侵入を防ぎましょう 。

  4. 地域での環境整備
     米子市では、農地に石灰散布や除草・耕うんなどによるヌカカ抑制を推進中です(米子市HP


🩹 刺されたときの対処法

  1. まずは患部を洗浄・清潔保持
     かきむしらないように、やさしく水洗いを 。

  2. 熱(45℃前後)で毒を弱める方法
     腫れる前にぬるめのお湯をかけると症状軽減に有効。逆に腫れた後は冷やしてください 

  3. 内服薬、軟膏
     痒みが強く掻き壊してしまう、赤く大きく腫れて治らない等の際には、早めに医療機関へ相談を。


🏥 当クリニックでは

虫刺されトラブルのご相談を常時承ります。患部の状態に応じて、外用薬の処方やかゆみ止め剤などを提案いたしますので、お気軽にお問い合わせください。

また、詳細な虫刺され全体の対処法は、当院HPの虫刺されページにも掲載しています。
➡️ 虫刺され全般のケアはこちらをご覧ください


✅ まとめ

  • ヌカカは米子市の干拓地などで5~7月に活発に発生し、非常に小さく網戸を通過するため注意が必要です 

  • 長袖・虫よけ・環境管理を組み合わせることで予防効果を高められます

  • 刺されたときは、清潔保持+温冷ケア+外用薬で対処し、悪化傾向あれば、小児科など医療機関を受診しましょう。

 

 

 

 

鳥取県西部地域のマイコプラズマ感染症の発生状況

2025年現在の感染状況|米子市でも注意が必要です

2024年に比較してマイコプラズマ肺炎の報告数は減少傾向にありますが、鳥取県米子市周辺では散発的な感染例が続いています

2024年には、マイコプラズマ感染症が全国的に8年ぶりの大流行となり、例年を大きく上回る患者数が報告されました。
その影響を受けた地域では、今もなお小規模な流行が断続的に続いている状況です。

一見すると風邪のように見えることもあるこの感染症ですが、長引く咳発熱を伴うことがあり、特に5〜14歳のお子さんで多く見られます。

流行の要因は?

2024年以降のマイコプラズマ肺炎流行の背景には、以下の要因が考えられています。

  1. 免疫を持たない人の増加:過去8年間大きな流行がなかったため、特に若年層で免疫を持たない人が蓄積
  2. 社会活動の正常化:新型コロナウイルス感染対策の緩和により人と人の接触機会が増加
  3. 国際的な感染拡大:欧州や中国での感染増加が日本国内の流行に影響

マイコプラズマ肺炎とは?感染の特徴と注意点

マイコプラズマ肺炎は、「肺炎マイコプラズマ」という細菌が原因の呼吸器感染症です。
**「歩く肺炎」**とも呼ばれ、軽い症状で日常生活を送ってしまい、感染を広げることがあるため注意が必要です。

主な症状

  • 乾いた咳(コンコンと続く咳が長引きます)

  • 中等度の発熱(37.5〜39℃程度。解熱しても咳は続くことが多い)

  • 頭痛・だるさ・食欲不振などの全身症状

  • のどの痛み、鼻水、胸や耳の痛み(中耳炎の合併)

咳の特徴

  • 症状が軽いうちは、乾いた咳が中心です

  • 時間が経つと痰がからんだ咳になることもあります

  • 特に夜間や早朝に咳が悪化しやすいです


重症化することもあります。受診の目安は?

以下のような症状がある場合は、早めに受診しましょう

  • 息苦しさ、呼吸が浅い

  • 高熱が3日以上続く(39℃以上)

  • 水分が取れず、ぐったりしている

  • けいれんや意識がぼんやりしている

お子さんは、症状をうまく伝えられないこともありますので、保護者の方は注意して見守りましょう。


マイコプラズマ感染症の検査と診断

当院では、下記の検査により診断を行っています:

  • PCR検査:のどや鼻の粘液からマイコプラズマの遺伝子を検出します

  • 血液検査:必要に応じて、体内の炎症反応を調べます

  • 胸部レントゲン検査:必要に応じて、肺に影が出ていないかを確認します

また、マクロライド系抗菌薬に効かない耐性菌が増えているため、治療効果が見られない場合は薬を切り替える判断を行います。

咳や発熱などの症状が続くときは、早めの受診を考えて下さい。


治療について

治療には、主に以下の抗菌薬を使用します:

  • マクロライド系(第一選択)

  • キノロン系(重症や耐性菌が疑われる場合)

  • テトラサイクリン系(8歳以上のお子さんに使用可)


まとめ|米子市でも感染が報告されています。早めの対応を!

2024年から、マイコプラズマ肺炎が全国的に流行しています。
鳥取県米子市周辺でも、散発的に感染が報告されています。

長引く咳や微熱が続くときは、早めに医師の診察を受けましょう。

さらに詳しく:マイコプラズマ感染症の関連記事はこちら

鳥取県西部・米子市周辺での水痘の流行状況と注意点

現在の水痘の流行状況について

最近、鳥取県西部地域、特に米子市周辺の一部の学校や保育園で、水ぼうそう(水痘)の流行がみられます。
ただし、地域全体での大流行ではなく、施設によって流行の有無が異なるのが特徴です。

感染が報告されているのは小学生や中学生のお子さんが多く、すでにワクチン接種を済ませているお子さんにも感染が確認されています。
ですが、ワクチンを受けているお子さんの多くは症状が軽く、短期間で回復しています。

水痘の症状がわかりにくい理由

今回の流行では、次のような特徴があり、見逃しやすい症状が目立っています。

  • 発熱がない、もしくは微熱で気づかれにくい

  • 発疹の数が少ない

  • 虫刺されと間違えやすい皮膚症状がみられる

  • 典型的な水疱(水ぶくれ)が現れない場合もある

このように、ワクチンを受けたお子さんは「ブレイクスルー感染」と呼ばれる軽い症状での感染が多くなっています。

ワクチン接種後の感染(ブレイクスルー感染)とは?

水痘ワクチンは非常に効果的ですが、**10〜20%程度のお子さんには「ブレイクスルー感染」**が起こることがあります。
これは、ワクチンで重症化は防げているものの、軽い症状で感染するケースのことを指します。

このタイプの感染では、以下のような特徴があります:

  • 発疹が少なく、あまりかゆくない

  • 水ぶくれがほとんどできない

  • 発熱しない、またはごく軽い

  • 発疹が虫刺されのように見える

  • 数日で自然に治ることが多い

このため、「いつのまにか治っていた」ということもあり得ますが、発疹がすべて痂皮化するまでは(かさぶたになるまでは)、ほかのお子さんにうつす可能性があるため、注意が必要です。

水痘(みずぼうそう)の関連記事はこちら

伝染性紅斑(りんご病)流行しています(鳥取県西部、米子市周辺)

🌸伝染性紅斑(りんご病)の流行について

鳥取県西部、米子市周辺では伝染性紅斑(りんご病)が流行していて、注意報レベル〜警報レベルが続いています。
お子さんの手足が淡く赤くなったり、頬が赤くなる・だるさ
などの症状がある場合は、感染の可能性があります。

風邪予防のワンシーン


📖くわしい症状・対応方法など (⇒ こちら

🔗別ページに次のような内容をわかりやすくまとめています

  • りんご病の原因と感染経路など
  • 登園・登校の目安について
  • 妊婦さんや基礎疾患のある方が注意すべき点
  • ご家庭でのケア方法と予防策

🏥気になる点があるときはご相談ください

お子さんの症状に不安がある場合や、「これってりんご病?」と気になるときは、当クリニックまでお気軽にご相談ください。

学校健康診断・学校検尿について

【米子市周辺でも学校健診が始まっています】

4月から6月にかけて、米子市周辺の学校では健康診断(学校健診)が実施されています。
内科検診のほかに、歯科、眼科、耳鼻科の検診も行われ、子どもたちの健康状態を総合的に確認する重要な機会です。

内科検診では、心臓・肺・皮膚・脊柱・運動器などの異常の有無を確認します。具体的には、心雑音や肺音、脊柱の側弯(そくわん)、手足の動きの状態などを診察します。あわせて、身長・体重の推移も確認され、成長曲線を用いて成長のバランス(たとえば肥満ややせの傾向)を評価します。
▶︎ 詳しくは[成長障害・肥満とやせのページ]をご覧ください(※内部リンクへ)

また、学校での検尿では、尿中の蛋白や潜血(血液の混入)などの異常を調べる検査が行われます。

学校健診で「異常の可能性がある」と指摘されても、再検査で異常が認められない場合も少なくありません。ただし、健診は病気の“早期発見”につながる大切な機会でもあります。

学校から医療機関の受診を勧められた場合は、なるべく早めに受診し、必要に応じて専門的な診察を受けるようにしましょう。

▶︎ 詳しくは学校健康診断、学校検尿のページを参照して下さい

鳥取県・米子市における百日咳の流行について

百日咳が鳥取県で流行しています

2024年夏ごろから、鳥取県内で百日咳(ひゃくにちぜき)の大規模な流行が確認されました。
特に鳥取市を中心とした県東部では、小中高校生を中心に患者数が急増し、2024年後半には県全体で365人の感染が報告されました。これは、2018年比で6倍以上でした。

全国的にはまだコロナ前の水準に戻っていない中で、鳥取県の増加は目立っており、都道府県別でも上位に位置しています。

米子市を含む地域での感染報告

流行のピークは2024年夏から秋にかけてでしたが、その後も完全には収束せず、2024年末以降も感染報告が継続しています。
2025年4月現在、米子市を含む県西部地域でも、10歳前後の子どもを中心に百日咳の発生が続いているとの県の公式発表がありました(鳥取県HP)。

鳥取県や米子市の保健所は、次のような対策を呼びかけています:

  • 定期予防接種(DPT-IPV)の実施の確認

  • 家庭や学校での手洗い・マスク着用の励行

  • 咳が出る場合の「咳エチケット」の徹底

  • 乳幼児がいる家庭では特に注意をしてください

学校や地域での集団感染の可能性について

2024年7月以降、鳥取県東部の中学校を中心に集団感染の報告がありました。
夏休み中の部活動や地域活動を通じて、米子市・境港市方面への感染拡大も心配されていました。

現在のところ、米子市内の特定の学校名などは公表されていませんが、県西部でも学齢期の子どもたちを中心に小規模な集団感染が起きていた可能性が指摘されています。

注意点

百日咳は、一度感染しても再感染する可能性がある病気です。
また、ワクチンの効果が年齢とともに薄れてくるため、思春期や大人も感染することがあります。

乳児や免疫力の低い子どもたちへの感染に対して注意が必要です
咳が続いている家族や兄姉がいる場合は、乳児との接触を控えるなど、感染拡大を防ぐ意識を持つことが大切です。

百日咳にみられる症状

百日咳は、初期は風邪に似た症状で始まり、次第に「コンコンコン」と連続する咳が続くようになります。
かぜやほかの感染症、アレルギー症状との鑑別が難しいことはありますが、百日咳には以下の症状がみられることが多いです。

  • 咳が1週間以上続く

  • 咳のあとに嘔吐することがある

  • 呼吸のときに**「ヒューヒュー」という音**がする

  • 夜になると咳がひどくなる

  • 周囲に百日咳の患者がいる

百日咳予防のワクチン接種について

百日咳の予防には、定期予防接種である5種混合ワクチン(DPT-IPV-Hib:ジフテリア・百日咳・破傷風・ポリオ・ヒブ)が効果的です。

ワクチン接種のポイント

・標準的には生後2ヶ月から接種開始、4回の接種で基本的な免疫をつけます。ただし、ワクチンの効果は年数とともに弱まるため、特に小学生〜10代以上は感染・伝播の可能性があります
・就学前(5~6歳)の年長児には三種混合ワクチン(DPT)の追加接種が有効とされています。これは定期接種ではなく私費での接種となりますが、現状では百日咳予防に対して大変有効な方法ですので、ぜひご検討下さい
・乳幼児がいるご家庭では、周囲の大人や年長のお子さまも必要に応じて追加接種をご検討ください

当クリニックでは

当クリニックでは、百日咳を含む感染症の早期診断と治療に対応しています。
米子市を中心とした地域での流行状況に基づき、抗原検査、PCR検査、LAMP法などにより診断を行っています。

「咳が長引く」「咳込みがある」など気になる症状がみられたら、お気軽にご相談ください。

※予防接種のご相談も承っておりますので、接種状況や追加接種についてご不明な点があれば、お気軽にご相談ください。

百日咳について詳細は⇒ こちら