子どもの腹痛で頻度が高いものは急性胃腸炎や便秘症で通常は軽症で経過しますが、時に強い腹痛を訴えます。また急性虫垂炎(盲腸)や腹膜炎、腸閉塞など当初腹痛の程度が軽度でも、時間の経過とともに重篤となり緊急の対応が必要となる病気もあります。2歳頃までのお子さんは、はっきりとした腹痛を訴えることができず、機嫌が悪く泣いているだけの時もありますので注意が必要です。腹痛は病状の重症度と痛みの程度が一致しないことがありますので、嘔吐や下痢といった他の症状の経過観察がとても大事です。受診される場合は、これらの症状の経過を医師にお伝えください。具体的には、痛みの部位、痛みの経過(ずっと痛い、だんだん悪化など)、排便状況、便の状態(色・性状・量・回数など)、発熱の有無などを記録していただくと診療の大きな手助けとなります。
下痢の原因でもっとも多いのがウイルス感染によるものです。いわゆる胃腸かぜで、山陰では「腸感冒」と呼びます。腸の粘膜が傷ついて、水分や栄養分を十分吸収できないためにおこり、数日から1週間くらい続きます。下痢の時は全身状態とともに、便の状態をよく観察してください。便が出た時刻、1日の回数、硬さ、色(白っぽい、黄色、緑色、黒い色など)、粘液あるいは血液が混ざっていないか、におい(甘酸っぱかったり、腐敗したような臭いなど)などを記録しておきましょう。またスマホなどでの画像記録やオムツを持参していただくと状態がわかりやすいです。機嫌、ぐったり感、排尿回数や量、嘔吐の有無なども受診時にお知らせください。下痢の時は脱水に注意が必要です。水分は十分に与えることが大切ですが、軽度の下痢の場合は食事を与えてもかまいません。ジュースやソーダなど糖分の多いものは下痢が治りにくくなることがあります。母乳はよいですがミルクは下痢の時に吸収がよくないため注意が必要です。下痢の回数が多い時や経口摂取が十分でない時は、食事よりしばらく薬局で売られている脱水改善用の飲みもの(OS-1などの経口補水液)がよいでしょう。ある程度下痢がよくなってきたら、バナナ、おかゆ、パン、麺などの消化のよいものを徐々に与えてください。下痢止めの薬は腸の動きを抑えるため、下痢や嘔吐が悪化することがありますので使わない方が多いです。
嘔吐は胃腸の消化能力が低下しているため、胃腸内のものを拒絶して起こる反射です。吐いたあとに水分をとることができれば経過をみることもできますが、吐いたものの中に血液(赤~黒色)や胆汁(濃い緑色)が混ざっている場合、発熱、頭痛、腹痛などの他の症状を伴う場合、ぐったりするなど全身状態が悪い場合は、重症の病気の可能性もありますので早めに小児科を受診してください。嘔吐で気をつけるのは脱水ですが、嘔吐直後は吐き気がおさまるまで何も与えず胃腸を休ませ、その後吐き気が落ち着き水分を欲したらお茶や経口補水液(OS-1など)などを少量ずつゆっくり与えてみます。食事はある程度水分がとれてから再開しましょう。様子をみながらうどんやおかゆなど消化のよいものを少量ずつ与えてみましょう。吐き気の強い時、嘔吐を繰り返す時、嘔吐の勢いが強い時などは早めに受診しましょう。整腸剤や吐き気など症状を和らげるお薬を使用することが一般的です。
嘔気、嘔吐、下痢を主症状とする感染力の強い急性胃腸炎の原因ウイルスのひとつです。秋~冬に流行しますが、年間を通して発生します。幼稚園、保育園など集団生活の場で流行しやすく、家族内感染例も時々みられます。
発熱、嘔気、嘔吐、水のような白っぽい便を主症状とする感染力の強い急性胃腸炎の原因ウイルスのひとつです。冬~春にかけて流行します。なお、時に重症化すると脳症、けいれんなどを引き起こすことがあります。そのため乳児へのロタウイルスワクチンによる重症化、合併症の予防が大切です。 ※ロタウイルスワクチンについてはこちら
発熱、嘔気、嘔吐、下痢を主症状とする感染力の強い急性胃腸炎の原因ウイルスのひとつです。年間を通して発生します。
腸が腸の中に入り込んで腸が詰まる病気です。間欠的にお腹が痛くなるため、反復性に機嫌が悪くなったり、血便(オムツに血が混じる便が出る)がみられる場合や、嘔吐と共に顔色不良となりぐったりするなどの症状がみられるときは、腸重積症を考える必要があります。激しく嘔吐したり血便が出る場合は受診が必要です。半日以上続くと重症化する可能性がありますので、できるだけ早く医療機関にかかりましょう。
胃の出口である幽門部が厚くなって通りが悪くなる病気です。生後2〜4週頃の発症が多いため、この時期に嘔吐の回数や程度が徐々に悪化し、噴水のように勢いよく吐く時はすぐに受診が必要です。